コンピュータが発明されてから、今だ50年が経過したに過ぎない。したがって、現在、コンピュータに関する常識と思われているものでもさらに50年後にはまったく変わっているものもあるだろう。
現在、数値計算はただ計算するだけで、その精度は保証しなくてよいという常識の下に行われている。精度を保証するのが大変であるという信仰があるために、このような常識がまかり通っているのである。このような常識に挑戦し、精度の保証された数値計算を行うのが常識となる日がくるようにしたいというのが本研究室の目標である。
このような目標の下で、10年間研究を行ってきた。最初は、数値計算の精度が保証できる原理についての研究であった。数値計算というコンピュータ上の処理に対して不思議に数学の関数解析という分野の不動点定理が役に立ち、非線形微分方程式の厳密解を計算機で導く原理を導くことができる。この原理を使って、例えばカオス解析で重要となるホモクリニック軌道の存在証明を与えることができた。ニュートン法、区間解析、アルゴリズムの自動微分、演算子多重定義などのキーワードが関係する。
こうして数値計算の精度を保証する原理があり、それを使って、今まで証明されていない数学的な定理を証明することができることもわかってきた。では、工学的な場面で日常的に精度の保証された数値計算が行われるようになるであろうか。また、数学的にも偏微分方程式の解の存在証明は精度保証付き数値計算を使って楽々できるという時代がくるであろうか。それが次の段階でのテーマとなっている。
最近になって、数値計算の丸め誤差の評価が非常に簡単にできるやり方があることがわかった。この方法は誤差評価の精度もよく、かつ高速である。ただし、高速であるというのは、現在のところ、近似解を求めるのの数倍(10倍以内ほどの意味)程度で、うまくいってそれと同じ程度の計算量で、(厳密な意味での)精度保証ができるという意味である。現在のテーマはこのやり方で数値計算の理論体系を精度保証付き数値計算の理論体系に書き換えてしまうことである。従来の数値計算の理論は実にうまくできていて、すんなり、精度保証付き数値計算の理論にバージョンアップできそうである。また、精度保証付き数値計算そのものは丸め誤差の制御を従来の数値計算に加えて行うことで、これも従来の数値計算ライブリなどの財産を継承できそうである。
数値計算といえば精度保証付き数値計算のことであるという日がくるためには何を研究すればよいか。それが今後の指導原理である。
精度保証は近似解を計算する程度の計算量でできるというが予測である。実際に比較的やさしい普通の問題はこの程度の計算量で精度保証ができる。当面はこの予測をいろいろな問題にたいして実証していくことである。それが可能として、どのように科学技術に影響を与えるであろうか。出発点は非線形問題を解きたいというところにあった。数値計算はVLSIのCAD などを例として現代社会に深く根づいている。いろいろなアプローチを展開したいと考えている。
このページのURIはhttp://www.oishi.info.waseda.ac.jp/~oishi/int.htm
最終更新 2002/4/19