第7章の後半

7.4 可逆(相反)定理

前節で述べたように、節点方程式は、V_iを各節点の節点0を基準とする電圧として、節点電圧ベクトルを

V=(V_1,...,V_n)

とすると、

YV = I

と書ける。ただし、I は電流源によって決まる。ここで、Yは対称行列である。I=(I_1,0,...,0)^tのとき、Z=Y^{-1}とする。Z^t Y=Z^t Y^t =(YZ)^t =Iであるから、Z^tもYの逆行列となる。逆行列は一意であるから、Z^t=Zが成り立つ。すなわち、Yの逆行列Zも対称である。

V = Z I = (Z_{11} , Z_{21} , ..., Z_{n1} )^t I_1

となる。したがって、特に、V_2 = Z_{21} I_1である。ここで、I' = (0,I_1,0,...,0)^tの場合を考えると

V' = Z I' = (Z_{12}, Z_{22}, ..., Z_{n2})^t I_1

となる。したがって、 特に、 V'_1 = Z_{12} I_1 となることがわかる。Z_{12}=Z_{21}が成り立つから

V_2 = Z_{21} I_1 = Z_{12} I_1 = V'_1

が成り立つことがわかる。 V_ 2 = V'_1が成り立つことを相反性という。ここで、1と2という添え字は一般に、iとjで置き換えてもよいことは自明である。このような関係が成立することを可逆定理、または、相反定理という。

7.5 回路の双対性

ランダムハウスの英和辞典を引くと、dualityとは

「定理において,ある対象・関係・作用を交換しても,その定理が成り立つという対称性.」(ランダムハウス英和辞典(小学館))

と定義されている。

抵抗の直列接続の合成抵抗を計算するためのルールと、コンダクタンスの並列接続の合成コンダクタンスを計算するルールは抵抗をコンダクタンスに置き換えれば、まったく同じとなる。このような対称性を回路の双対性という。抵抗をインピーダンスに拡張しても、今の話は成立する。また、キルヒホッフの電流則と電圧則はKCLをカットセットを出入りする電流の代数和はゼロであると読むと、KVLが任意の閉路についてその閉路を構成する枝電圧の代数和がゼロであるという性質と双対である。このように、カットセットと閉路が対を成すところから、電気回路の双対性が来たることが多い。

電気回路の双対性においては、交換する対象は

電流と電圧

抵抗とコンダクタンス(インピーダンスとアドミッタンス)

直列と並列

短絡と開放

電圧源と電流源

などである。


©大石進一